1.専門卒の初任給の平均

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」に、新規学卒者の学歴別の賃金が載っています。最新の令和7(2025)年の結果は、次のとおりです。

学歴月額(男女計)前年からの増減
高校207,300円+5.0%
専門学校230,700円+3.5%
高専・短大235,500円+5.2%
大学262,300円+5.6%
大学院299,000円+4.0%

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」第10表 新規学卒者の性、学歴別賃金。専門学校卒は、男性227,800円、女性232,400円。

この数字を使うときは、次の3点に気をつけてください。

  • 2025年6月分の「所定内給与額」の平均です——あらかじめ決まった条件で支払われる給与から、残業代などの手当を差し引いた額で、税金などを引く前の金額です
  • 常用労働者10人以上の民営事業所が対象です——それより小さい会社の数字は含まれていません
  • 求人票に書く「初任給」と、まったく同じものではありません——職種、地域、企業規模によっても差があります

平均は、自社の条件がどのあたりにあるかを確かめる物差しです。そのまま当てはめる答えではありません。自社の金額の決め方は、第5章でご説明します。

2.平均は、毎年上がっている

専門学校卒の平均は、ここ2年続けて上がっています。

調査年専門学校卒の平均(男女計)前年からの増減
令和6(2024)年222,800円+3.9%
令和7(2025)年230,700円+3.5%

人材の獲得競争のなかで、条件を引き上げている企業が増えている様子がうかがえます。平均は「ここまで出せば十分」という線ではなく、ほかの会社と比べられるときの基準と考えたほうが実態に近いでしょう。

もうひとつ、時期のずれにも注意が必要です。統計は調査した年の6月時点の数字で、公表はその翌年になります。次の春に入社する人の条件を考えるときには、すでに少し前の数字だということを頭に置いてください。

ただし、金額だけで競おうとすると、体力のある会社が有利になりがちです。そこで次の章からは、月給の額以外に、学生が何を見ているかを扱います。

3.学生は、月給だけで比べていない

面談で学生の話を聞いていると、比べているのは月給の額だけではありません。次のような点もあわせて見ています。

  • 手取りがいくらになるか——総支給と手取りの違いを、学生は把握しきれていないことがあります
  • 固定残業代が含まれているか——含まれる場合、何時間分かが書かれているか
  • 住まいの支援があるか——住宅手当や寮・社宅の有無。実家を出る学生にとっては、判断材料のひとつになることがあります
  • 1年目から3年目でどう上がるか——入口の金額だけでなく、その先が分かる求人のほうが安心されやすいようです
  • 資格取得の支援——資格が必要な職種では、支援制度の有無も判断材料になります
  • 休日と働き方——年間休日の日数や、休みの取りやすさ

基本給を大きく上げるのが難しくても、昇給の見通しや手当の内訳を具体的に書くことはできます。「◯年目で◯◯円程度」とまで書いている求人は、まだ多くないようです。

はじめて新卒を採用される場合は、給与とあわせて指導役や1年目の仕事の範囲も決めておく必要があります。新卒を初めて採る会社が、先に決めておくことでご説明しています。

4.一人暮らしの学生にとっての、住まいの支援

当社が日々お会いする学生にも、地方から上京して一人暮らしをしている人は少なくありません。一人暮らしでは、家賃が毎月の出費のなかで大きな部分になりがちです。住まいへの支援は、月給の額とあわせて、会社を比べるときの判断材料のひとつになることがあります。

支援の形は、いくつかあります。

支援の形学生から見ると会社から見ると
住宅手当毎月の給与に上乗せされるので、分かりやすい条件(年齢、距離、賃貸か持ち家か)の決め方が要る
寮・社宅家賃の負担が軽くなる。住まい探しの手間がない物件の確保や管理が必要になる
借り上げ社宅自分で選んだ部屋に、会社の支援つきで住めることがある契約の名義や自己負担額の決め方が要る
引っ越し費用の補助入社前の出費が抑えられる一度きりなので、始めやすい

ここで、第1章の統計との関係を押さえておくと役に立ちます。

  • 現金で支払う住宅手当は、統計の「所定内給与額」に含まれます——基本給だけを平均と比べると低く見えても、住宅手当を含めると平均に届くことがあります
  • 寮や社宅のように、現金でない支援は含まれません——その価値は、統計の数字には表れません

つまり、基本給の額だけを平均と並べても、正確な比較にはなりません。求人票では、基本給・手当・住まいの支援を分けて、それぞれ具体的に書くことが大切です(第6章)。

なお、住宅手当として現金で支払うか、社宅として用意するかで、税金や社会保険料の扱いが変わることがあります。制度を新しく作る、または見直す前に、税理士や社会保険労務士にご確認ください。

5.自社の金額は、社内の基準から決める

平均の数字が分かっても、それをそのまま当てはめようとすると、社内で止まることが少なくありません。いまの給与の基準との整合が取れないからです。平均は物差しとして使い、金額そのものは社内の基準から決めていきます。次の順に確認すると、根拠のある金額になります。

順番確認すること
1現在の大卒初任給と、その根拠。いつ、何を見て決めたか
2自社に専門卒・高卒の在籍者がいるか。いるなら、入社時の金額と現在の金額
3その職種の賃金テーブル。等級の入口はどこか。学歴で分けているか
4昇給の設計。1年目から3年目でどう上がるか
5手当と住まいの支援。住宅、通勤、資格、地域。固定残業代を含むか
6同じ等級の既存社員との差。新卒が上回らないか

いちばん詰まりやすいのは6つめです。初任給を上げた結果、数年勤めた社員と逆転する。これが起きると、採用はできても定着で失うことになりかねません。初任給だけを動かさず、2〜3年目までをセットで見てください。

あわせて、専門卒の初任給を大卒と分けるか、揃えるかも決めておきます。正解はありませんが、判断の軸は整理できます。

考え方気をつけること
学歴で
分ける
既存の賃金テーブルに素直に乗る。社内の説明がしやすい入社時点の技能が同等以上でも金額が下がる場合、本人の納得が得にくい
職種で
揃える
同じ仕事なら同じ入口にする。技能を評価する姿勢が伝わる既存の賃金テーブルの見直しが必要になることがある

専門学校で学んできた学生は、入社時点で、仕事の土台になる知識と手を動かした経験を持っています。その職種に直結する学科であれば、「学歴」ではなく「入社時にできること」で入口を決めるほうが、説明もしやすくなります。この線引きの考え方は、「大卒以上」を外すとき、社内をどう通すかで詳しく扱っています。

6.求人票での書き方

見直し前

【給与】月給 ◯◯円〜(経験・能力を考慮のうえ決定)
【諸手当】各種手当あり
【昇給】年1回

「〜」と「各種」で、実際にいくら受け取れるのかが分かりません。新卒には「経験・能力を考慮」も判断できません。

見直し後

【給与】月給 ◯◯円(専門卒・◯◯職)
 内訳:基本給 ◯◯円+固定残業代 ◯◯円(◯時間分。超過分は別途支給)

【手当】
通勤手当(上限 ◯◯円)/住宅手当(条件:◯◯、月 ◯◯円)/資格手当(◯◯ 取得で月 ◯◯円)

【住まいの支援】
借り上げ社宅あり(自己負担 月 ◯◯円、条件:◯◯)/引っ越し費用の補助(上限 ◯◯円)

【昇給の目安】
年1回。入社3年目で月給 ◯◯円程度が標準です(◯年度実績)。

【賞与】年2回(◯年度実績 ◯か月分)

変えたのは4点です。

  1. 内訳を出した——固定残業代が含まれるなら、時間数まで書きます
  2. 手当を具体化した——「各種手当」では判断できません
  3. 住まいの支援を分けて書いた——手当と社宅は性質が違うので、別の項目にします(第4章)
  4. 数年後の目安を書いた——実績値であれば、年度を添えて書けます

求人票全体の書き方は、専門学校に出す求人票は、何を書けば読まれるかでご説明しています。

7.決めたあとに揃えること

  • 学校へ伝える——求人票の金額や手当は、就職担当の先生が学生に説明する材料になります
  • 面接で同じことを言えるようにする——求人票と面接で説明が食い違うと、辞退の原因になりかねません
  • 既存社員への説明を用意する——初任給や手当を動かした場合、在籍者から質問が出ます
  • 毎年、平均と見比べる——統計は毎年更新されます。自社の条件がどのあたりにあるかを、年に一度確かめてください

結果を振り返るときは、応募数だけでなく、内定辞退の理由に金額や住まいの条件が挙がったかどうかを見てください。挙がらないのであれば、ほかの要因を探します。

なお、専門学校生は在学期間が短く、授業や実習との両立も必要なため、就職活動に使える時間は限られます。この事情は企業向けサービスのページでご説明しています。

まとめると、専門卒の初任給の平均は月230,700円(2025年)で、毎年上がっています。平均はそのまま当てはめる答えではなく、比べられるときの物差しです。学生は月給の額だけでなく、手取り、昇給の見通し、住まいの支援もあわせて見ています。金額は社内の基準から決め、基本給・手当・住まいの支援を分けて、求人票に具体的に書いてください。