1.反対されているのは、学歴ではありません

「大卒以上」を外したい。そう提案すると、配属先や決裁者から止まることがあります。このとき返ってくる言葉は、たいてい学歴そのものの話ではありません。

  • 「教える手間が増えるのでは」
  • 「途中で辞めるのでは」
  • 「これまでと基準が変わると、評価が揃わない」
  • 「前例がない」

つまり、懸念は「育成の負荷」と「定着」に集約されます。ここに答えられる材料を用意すれば、話は進みます。逆に「専門学校生は優秀です」と主張しても、この懸念には答えていないため、平行線になります。

2.要件を2つに分けて示す

社内説明の土台になるのは、入社時に必要な条件と、入社後に教える内容の線引きです。これを配属先と一緒に作ってください。担当者が一人で作ると、通りません。

入社時に
必要なこと
業務に必要な資格、基礎知識、実習や制作の経験、勤務できる場所と時間帯
入社後に
教えること
自社独自の業務手順、製品知識、社内システムの使い方など、教育できる内容

この作業をすると、たいてい次のどちらかが分かります。

  1. 「大卒以上」は、必要な条件の代わりに置かれていた——本当に必要なのは別の条件だった
  2. 「大卒以上」に対応する具体的な条件が書けない——過去の求人票を引き継いできただけだった

どちらであっても、要件を書き直す根拠になります。

3.社内説明に使う判断項目

会議で使える形に整理しました。この順に埋めて、そのまま資料にできます。

項目埋める内容
現状この職種の直近◯年の応募数、面接数、採用数。充足しているか
要件の棚卸し入社時に必要な条件(第2章)。「大卒以上」に対応する具体的な条件があるか
対象の広がり要件を書き直した場合、どの層に届くようになるか
育成の負荷入社後に教える内容(第2章)。現行の新人教育と何が変わるか
評価の基準選考で何を見るか。学歴の代わりに使う判断材料
処遇初任給と賃金テーブルの扱い。既存社員との整合
試す範囲全職種か、1職種か。今年度だけか
振り返りいつ、何を見て判断するか

「試す範囲」を小さく置くのが要点です。全社の方針を変える提案は通りにくく、「この職種で、今年度だけ」であれば判断の負荷が下がります。

処遇の決め方は専門学校卒の初任給をどう決めるか、選考で何を見るかはポートフォリオのどこを見るかもあわせてご覧ください。

4.稟議の記載例

社内の様式に合わせて書き換えてお使いください。

件名:◯◯職 新卒採用における応募要件の見直しについて

1.現状
◯◯職の新卒採用は、直近◯年で応募 ◯名、面接 ◯名、採用 ◯名。採用計画 ◯名に対し充足していない。媒体の追加と求人原稿の改訂を行ったが、応募数に変化はなかった。

2.原因
募集要件を見直していないため、届く層が変わっていない。現行の要件「大卒以上」は、◯年に設定したもので、現在の業務内容および育成体制との対応が確認できない。

3.提案
◯◯職の応募要件から「大卒以上」を外し、次の条件に変更する。
・入社時に必要な条件:◯◯/◯◯/◯◯
・入社後に教える内容:◯◯/◯◯/◯◯(現行の新人教育の範囲内)
これにより、関連分野を学んだ専門学校生を応募対象に含める。

4.想定される効果と懸念
効果:これまで接点のなかった層に求人が届く。
懸念と対応:育成の負荷については、入社後に教える内容が現行の新人教育の範囲内であることを配属部門と確認済み。処遇については ◯◯ のとおり、既存の賃金テーブルと整合を取る。

5.適用範囲と期間
◯◯職のみ、◯年度の採用に限定して適用する。

6.振り返り
◯年◯月に、応募数・要件に合う応募者との面接数・採用数・入社後◯か月の状況を確認し、翌年度の扱いを判断する。

この書き方の要点は3つです。

  1. 「専門学校生を採りたい」から始めない——「充足していない」という事実から始めます
  2. 懸念に先回りして答える——育成の負荷と処遇は、必ず聞かれます
  3. 範囲と期間を限定する——後戻りできる提案は、通りやすくなります

5.配属先の懸念への答え方

言われること答え方
教える手間が増えるのでは入社後に教える内容を書き出したうえで、現行の新人教育と何が変わるかを示す。変わらないなら、そう言う
基礎がないのでは入社時に必要な条件を具体的に示し、選考で何を見るかを決める。学科名ではなく、授業や制作で何を経験したかを確認する
途中で辞めるのでは定着は学歴ではなく、入社前の情報提供と入社後の体制で決まる面が大きい。入社前に伝える内容を整える(入社前に何を伝えておくか
評価が揃わない選考で見る項目を先に決め、面接官の間で揃える。学歴を外すことは、基準をなくすことではない
前例がない1職種・1年度に限定して試す。振り返りの時期と見る指標を先に決めておく

6.外したあとにやること

  • 求人票を書き直す——要件を外しただけでは、届く相手は変わりません
  • 学校との接点をつくる——媒体に出すだけでは届かない層があります
  • 面接で見る項目を揃える——学歴の代わりに使う判断材料を決めておきます
  • 振り返りの日程を入れる——決めた時期に、決めた指標で見ます

求人票の書き直し方と接点のつくり方は、求人媒体を増やしても、新卒の応募が集まらないときでご説明しています。

7.最初の一歩

  1. 配属先と一緒に、入社時の条件と入社後に教える内容を書き出す(第2章)
  2. 第3章の8項目を埋める
  3. 第4章の記載例を、社内の様式に合わせて書き換える
  4. 適用範囲を1職種・1年度に限定して提案する

評価するときは、要件を外したこと自体ではなく、要件に合う応募者と面接できた数を見てください。そこが増えていなければ、要件ではなく接点の問題です。