1.完成度だけで見ると、判断を誤りやすい
ポートフォリオを開いて最初に目に入るのは、見た目の完成度です。ただ、完成度だけで順位をつけると、次のようなことが起こります。
- 講師の指導が強く入った作品が、上位に来る——本人の力なのか、指導の結果なのかが分かりません
- グループ課題の作品で、担当範囲が見えない——他の学生が手を入れた部分も含めて評価してしまいます
- 伸びしろのある学生を落とす——完成度は低くても、考え方や直す力がある学生を見落とします
入社後に任せたいのは、多くの場合、最初から完成品をつくることではありません。指示を受けて形にし、指摘を受けて直すことです。であれば、見るべきものも変わります。
2.見るべきは5つ
ポートフォリオから読み取りたいのは、作品の出来ではなく、その背景です。
| 制作意図 | 誰に何を伝えるために作ったのか。条件をどう解釈したのか |
|---|---|
| 担当範囲 | ひとりで作ったのか、分担したのか。分担ならどこを担当したのか |
| 修正の過程 | 講評や指摘を受けて、どこをどう直したのか |
| 使用ツールと環境 | 何のソフトを、どの程度使えるのか。自宅に制作環境があるか |
| 課題か自主制作か | 与えられたテーマか、自分で決めたテーマか |
この5つは、作品を見ただけでは分かりません。本人に聞いて初めて出てきます。ポートフォリオは、作品を評価するための資料ではなく、話を聞くための材料だと考えると、見方が定まります。
3.面接で使える質問例
作品を1点選んでもらい、次の順に聞いていきます。全部を聞く必要はありません。時間に応じて、上から順に使ってください。
制作意図を聞く
- この作品は、誰に向けて作りましたか。
- 課題として出された条件は、どのようなものでしたか。
- その条件を、自分ではどう解釈しましたか。
- いちばん伝えたかったことは何ですか。それはどこに表れていますか。
担当範囲を聞く
- この作品は、ひとりで作りましたか。何人で取り組みましたか。
- (複数なら)ご自身はどの部分を担当しましたか。
- 役割はどうやって決まりましたか。
- 自分が手を入れていない部分は、どこですか。
修正の過程を聞く
- 講評では、どのような指摘を受けましたか。
- その指摘を受けて、どこを直しましたか。
- 直さなかった部分はありますか。それはなぜですか。
- いま作り直せるとしたら、どこを変えますか。
ツールと進め方を聞く
- 何のソフトを使いましたか。授業で習ったものですか、自分で覚えたものですか。
- 制作にどのくらいの時間がかかりましたか。
- 途中で詰まったところはありますか。どうやって解決しましたか。
- 自宅に制作できる環境はありますか。
「どこを直しましたか」「直さなかった部分はありますか」の2問は、とくに多くのことが分かります。指摘をそのまま受け入れただけなのか、意図を持って判断したのか。入社後に指示を受けて動く場面と、直結します。
4.授業課題と自主制作は、分けて聞く
専門学校の制作は、テーマを与えられて形にする課題が中心になります。授業の多くが制作で、提出して終わりではなく、指摘を受けて作り直す過程が含まれる学科もあります。
そのため、ポートフォリオには授業課題が多く並ぶことがあります。これ自体は問題ではありません。与えられた条件のなかで形にする経験は、実務にそのままつながります。
ただ、授業課題と自主制作では、読み取れることが違います。
| 種類 | 読み取れること |
|---|---|
| 授業課題 | 条件の解釈の仕方、指摘への対応、期限内に仕上げる力 |
| 自主制作 | 関心の方向、自分でテーマを決める力、時間の使い方 |
どちらを重く見るかは、任せたい仕事によります。指示のもとで制作する仕事であれば授業課題が、企画から関わる仕事であれば自主制作が、それぞれ参考になります。面接の冒頭で「これは課題ですか、自主制作ですか」と確認するだけで、その後の質問が組み立てやすくなります。
5.評価の基準を、社内で揃える
ポートフォリオの評価は、見る人によって分かれます。現場の制作者と採用担当で、見ているところが違うこともあります。選考の前に、次を揃えておいてください。
- 入社時に求める水準——「ソフトを触ったことがある」なのか「ひとりで仕上げられる」なのか
- 入社後に教えること——自社の制作手順、進行管理、クライアントとのやりとり
- 誰が見るか——現場が見るのか、採用担当が見るのか。両方なら、それぞれ何を見るか
- 作品の点数と形式——何点見るか、その場で見るか事前に受け取るか
この線引きがないまま「良い作品かどうか」で判断すると、人によって結果が変わります。任せたい仕事から逆算して基準を決めるほうが、入社後のずれも小さくなります。
6.提出のさせ方で、応募数が変わる
最後に、応募の入口の話です。求人票に「ポートフォリオ必須」とだけ書かれていると、作品がまだ仕上がっていない時期の学生は、応募を見送ることがあります。
書き方を変えるだけで、検討できる学生の幅が変わります。
- 何点見るかを書く——「3点程度」と書いてあれば、準備の見通しが立ちます
- 形式を書く——冊子、PDF、Webのどれでもよいのか。ファイル形式や容量の上限
- 完成度を問わない旨を書く——「制作途中のものでも構いません」と書けるなら、書いてください
- 何を聞くかを書く——「誰に何を伝えるために作ったかを伺います」と先に伝えれば、学生も準備できます
なお、専門学校生は在学期間が短く、授業や実習との両立も必要なため、就職活動に使える時間は限られます。制作課題の締切と選考が重なる時期もあります。この事情は企業向けサービスのページでご説明しています。
母集団そのものが足りていない場合は、求人媒体を増やしても、新卒の応募が集まらないときもあわせてご覧ください。
7.最初の一歩
- 入社後1年目に任せる制作業務を、箇条書きで洗い出す(第5章)
- 入社時に求める水準と、入社後に教えることを分ける(第5章)
- 第3章の質問例から、聞く質問を5つ選んで面接の型にする
- 求人票に、点数・形式・完成度の扱い・何を聞くかを書く(第6章)
評価するときは、選考の結果だけでなく、面接官の間で評価が揃うようになったかを見てください。揃わないのであれば、基準ではなく質問の問題かもしれません。
逆に、企業から学生へ仕事内容や働き方を伝える方法は、映像・放送の新卒採用で、入社前に何を伝えておくかでご説明しています。