この記事では、応募が止まっている場所を切り分けたうえで、まだ候補に入れていないかもしれない母集団——専門学校生——への届け方をご説明します。職種ごとの具体的な進め方や、募集条件の決め方といった各論には深入りせず、どこから手をつけるかの判断に絞ります。
1.まず、どこで止まっているかを分ける
「応募が集まらない」と一口に言っても、原因によって打つ手は違います。採用管理画面と社内の記録を見て、募集職種と採用経路ごとに分けてください。
| いまの状況 | 確認すること | 見直す対象 |
|---|---|---|
| 求人の閲覧が少ない | 採用したい学生が、その媒体を利用しているか。学校経由の案内にも接点があるか | 掲載先、求人の見出し、学校との接点 |
| 閲覧はあるが応募が少ない | 仕事内容・条件・応募手続きが判断しやすいか | 求人原稿、募集要件、応募の手間 |
| 応募者と採用要件が合わない | 必要な知識と、入社後に教えることが書き分けられているか | 対象分野、必須条件と歓迎条件 |
| 応募後に辞退される | 連絡の間隔、選考の負担、説明との食い違いがないか | 連絡体制、選考日程、条件の擦り合わせ |
いちばん上の行に当てはまるなら、同じ種類の媒体を足しても状況は変わりにくくなります。まず確認したいのは、採用したい学生がその媒体を実際に使っているかどうかです。使っていないのであれば、掲載先を変えるか、別の経路を足す必要があります。
2.求人媒体に加えて、学校経由の接点をつくる
専門学校生が企業と出会う経路は、ひとつではありません。自分で就職サイトに登録して探す学生もいれば、学校に届いた求人を就職担当の先生から受け取って応募する学生もいます。どちらが中心になるかは、学校、学科、そして学生本人によって異なります。
ただ、学校を通じた案内が大きな位置を占めるケースは少なくありません。背景には、学び方の違いがあります。
- 時間割が学校で組まれている学科が多くあります。履修の自由度が高い大学と比べ、授業と実習が日中に入っている時間が長くなります。
- 2年制の学科では、就職活動に使える期間が限られます。1年次から2年次にかけて、学業と並行して進めることになります。
- 実習や制作の予定と並走します。就職活動だけに時間を割ける期間を取りにくい学科もあります。
つまり、媒体の掲載をやめる必要はありません。媒体は媒体で機能します。そのうえで、学校経由の接点を持っているかどうかを確認してみてください。媒体だけで届いていないのであれば、そこが空いている可能性があります。
3.求人票を、先生が学生に説明できる言葉で書く
学校経由で案内してもらう場合、多くは就職担当の先生が先に求人票に目を通します。先生が読んで、どの学科の、どういう学生に合いそうかを判断できなければ、学生のところまで案内が届きにくくなります。
見直し前
デザインに興味のある方歓迎。未経験でも安心の研修制度があります。風通しの良い社風で、成長できる環境です。
この書き方では、先生がどの学科の誰に勧めるべきかを判断する手がかりが足りません。
見直し後
入社後は、先輩の確認を受けながら、Webサイトに掲載する画像の加工とバナー制作の補助を担当します。授業や自主制作で Photoshop / Illustrator を使って制作した経験を活かせます。作品は完成度だけでなく、「誰に何を伝えるために作ったか」を伺います。
こう書いてあれば、先生は学科のカリキュラムと照らし合わせて学生に案内できます。
ポイントは3つです。
- 最初に任せる仕事を具体的に書く——配属後しばらく、何を担当するのか
- どの授業・実習の経験が活きるかを書く——先生がカリキュラムと照合できる
- 何を見て判断するかを書く——学生が準備しやすくなり、提出物への不安も下がります
3つめは、作品の提出を求める職種でとくに効きます。「ポートフォリオ必須」とだけ書かれていると、作品が仕上がっていない時期の学生は応募を判断しにくくなります。何をどの程度見るのかまで書いてあれば、応募を検討できる学生の幅が変わります。
作品の見方そのものについては、デザイン職の新卒採用で、ポートフォリオのどこを見るかでご説明しています。
4.「大卒以上」は、その仕事に必要な条件か
母集団を広げる前に、募集要件そのものを点検します。過去の求人票を引き継いでいると、いまの仕事内容や育成体制とずれていることがあります。
採用担当と配属先で、入社後に任せる仕事を確認し、条件を2つに分けてください。
- 入社時に必要なこと——業務に必要な資格、基礎知識、実習や制作の経験、勤務できる場所と時間帯。
- 入社後に身につけられること——自社独自の業務手順、製品知識、社内システムの使い方など、教育できる内容。
この整理をすると、「大卒以上」がその職種に必要な条件なのか、過去の求人票を引き継いできただけなのかを検討できます。必要な資格や知識は維持したまま、仕事に関連する学びと経験を持つ学生へ入口を広げる、という考え方です。
社内の合意の取り方は、「大卒以上」を外すとき、社内をどう通すかでご説明しています。処遇の決め方は専門学校卒の初任給をどう決めるかをご覧ください。
たとえばIT職なら、学歴区分に加えて、学習した言語、制作したもの、チーム課題での担当範囲を確認できます。ただし、授業で扱った経験と、業務を一人で担えることは別です。どこまでを入社時に求め、どこからを育成するのかを、あらかじめ決めておいてください。
5.専門学校で学んできたことを、具体的に確かめる
専門学校は、職業に必要な知識や技術を、実践を重視した教育を通じて学ぶ教育機関です。採用の検討にあたっては、在学期間や学科名だけで判断せず、授業・実習・制作で何を経験してきたかを具体的に確認することをおすすめします。
学科名だけでなく、扱った内容を確認する
同じ分野の学科でも、扱うテーマや実習の内容は学校によって異なります。カリキュラムを確認し、学生本人には、取り組んだ課題や制作物、実習で担当した範囲を具体的に聞いてみてください。「触れたことがある」のか「ひととおり作ったことがある」のかは、話を聞けば見えてきます。
進学の動機も、希望も、一人ひとり違います
就きたい仕事を決めて学校と学科を選ぶ学生もいれば、分野への興味から進学する学生もいます。学ぶ過程や就職活動を通じて、希望が変わることもあります。
ですので、学科名や専攻だけで候補を絞り込みすぎないことをおすすめします。学んだ分野に関連する仕事を希望する学生が多くいます。一方で、学んだ分野とは違う職種を志望する学生もいます。その場合は、これまでの経験をどう活かしたいと考えているかを聞くと、判断の材料になります。
6.選考の組み方を、学生の予定に合わせる
母集団と原稿を見直しても、選考の進め方が学業の予定と合っていないと、応募や選考の途中で機会を失うことがあります。負担や不安が辞退につながる場合もあるため、次の点を確認しておくと調整しやすくなります。
- 日中は授業や実習が入っている場合があります。面接日時の選択肢が平日の日中だけだと、参加しにくい学生が出ます。夕方や土曜、オンラインでの実施も選択肢に入れてください。就職活動時の出欠の扱いは学校によって異なるため、学校に確認できます。
- 選考の回数と1回あたりの拘束時間を見直す。回数が多いほど、学業との両立の負担は大きくなります。同じ日にまとめる、オンラインと対面を組み合わせるなど、負担を減らす方法があります。
- 課題や実習の繁忙期を確認する。作品の提出を求める場合、学校側の制作課題と重なっていないかを確認すると、準備の時間を確保できます。
- 連絡の間隔を決めておく。次の連絡がいつ来るのか分からない状態は、学生の不安につながることがあります。社内の返信目安と、結果連絡の時期を先に伝えておくと、辞退の理由をひとつ減らせます。
学事日程を先に確認するという方法があります。実習の時期、制作の繁忙期、就職活動に充てられる時期。学校にお尋ねいただくか、学校と接点のある紹介会社を通じて確認する方法があります。対応の方針は学校によって異なります。
7.接点のつくり方を選ぶ
母集団を広げたら、届ける経路を用意します。「専門学校生歓迎」と求人票に書いても、接点がなければ応募にはつながりません。
| 経路 | 役割 | 始める前に確認すること |
|---|---|---|
| 求人媒体・就職サイト | 企業や仕事を探している学生と接点をつくる | 採用したい学生の利用状況、掲載条件、閲覧から応募までの反応 |
| 学校への求人案内 | 就職担当者を通じて、関連分野を学ぶ学生へ伝える | 学科の学習内容、求人の受付方法と時期、案内のされ方 |
| 学内説明会 | 仕事内容や働く人の様子を直接伝える | 参加学生の分野、開催時期、学事日程との兼ね合い |
| 新卒人材紹介 | 面談で希望や経験を確認した学生の紹介を受ける | 得意分野、紹介対象、紹介前に確認している内容、費用の条件 |
学校への最初の連絡の仕方は、専門学校の学内説明会に参加するにはでご説明しています。学校に直接求人を出す場合、受付の方法も時期も学校ごとに異なります。数校であれば個別に進められますが、分野ごとに複数校と接点を持とうとすると、採用担当者の工数がまとまって必要になります。ここが、自社で学校との関係をつくるか、学校と接点のある会社を使うかの分かれ目です。
人材紹介を利用する場合も、紹介人数だけで選ばないでください。希望する分野の学校と接点があるか、紹介する前に学生の何を確認しているかを聞くと、見当がつきます。
一度にすべての経路を増やす必要はありません。いま接点を持てていない層に届く経路をひとつ選び、既存の募集と並行して試すと、負担と反応を確認しながら進められます。
職種ごとの進め方は、個別にご説明しています。施工管理職については施工管理の新卒が採れないとき、保育士については保育士の新卒求人に応募が来ないとき、エンジニア職についてはITの新卒採用で、「未経験可」だけでは伝わらないこと、アパレルの企画・生産職についてはアパレルの新卒採用で、企画・生産・本部に応募が来ないときをご覧ください。
8.最初の一歩は、ひとつの職種から
応募が集まっていない職種をひとつ選んで、この順番で進めてください。
- 経路ごとに、応募数と面接数を並べる。どこで止まっているかを確定させる(第1章)
- 入社時に必要な条件と、入社後に育てる内容を分ける。募集要件を判断する(第4章)
- 求人原稿を、先生が学生に説明できる言葉に直す。(第3章)
- 接点をひとつ追加する。学校への直接案内か、紹介会社か(第7章)
- 選考日程を、学生の予定に合わせて組み直す。(第6章)
評価するときは、応募数だけでなく、採用要件に合う学生と実際に面接できたかを見てください。経路ごとの費用と対応時間も記録し、内定・入社まで追えば、続ける価値のある経路かどうかを判断できます。