1.「力を入れたこと」が、出てきにくい理由
新卒面接の定番である「学生時代に力を入れたこと」。大学生であれば、サークル、アルバイト、ゼミ、留学といった授業の外の経験から話すことが多いと思います。
専門学校生の場合、事情が違います。2年制であれば入学から卒業まで2年しかなく、その大半が専門分野の授業、実習、制作、資格対策で埋まっています。「力を入れたこと」が、そのまま授業そのものなのです。
ところが学生の側は、それを語ってよいと思っていないことがあります。「授業は当たり前にやることだから、アピールにならない」と考えて、無理にアルバイトの話をする。結果として、いちばん見るべき部分が面接に出てこないということが起こります。
この記事は、質問の組み立て方のご説明です。カリキュラムも実習の形も学校・学科によって大きく異なるため、ここに挙げた聞き方がそのまま当てはまるとは限りません。相手の学科に合わせて言い換えてお使いください。
2.代わりに使える、3つの入り口
聞き方を変えるだけで、答えの質が変わります。使えるのは、多くの専門課程に共通する次の3つです。
| 入り口 | 質問の例 | 向いている分野 |
|---|---|---|
| 実習 | 実習でいちばん大変だったのは、どの場面でしたか | 医療、介護、保育、調理など、学外実習のある分野 |
| 制作 | いま手元にある作品のなかで、いちばん時間がかかったものはどれですか | デザイン、ゲーム・CG、映像、建築など |
| 資格 | 資格の勉強で、最初につまずいたところはどこでしたか | 資格取得を前提とする分野全般 |
いずれも「大変だったこと」「つまずいたこと」から入るのが共通点です。成功談より、困った場面のほうが具体的に語れます。そして、仕事で見たいのはまさにそこです。
作品を見る場合の着眼点はデザイン職の新卒採用で、ポートフォリオのどこを見るかで扱っています。
3.深掘りの順番は「事実 → 判断 → 変化」
入り口を作ったら、順番に降りていきます。いきなり「そこから何を学びましたか」と聞くと、用意してきた答えが返ってくるだけです。
| 段階 | 聞くこと | 質問の例 |
|---|---|---|
| 1. 事実 | 何があったか。状況と条件 | そのとき、何人で、どのくらいの期間でしたか |
| 2. 判断 | どう考えて、何を選んだか | ほかにやり方はありましたか。なぜそちらにしませんでしたか |
| 3. 変化 | 次に同じ場面が来たら、どうするか | いま同じことをやり直せるとしたら、どこを変えますか |
3段目が重要です。「学んだこと」を聞くと感想が返ってきますが、「やり直すならどこを変えるか」を聞くと、具体的な手順が返ってきます。手順で答えられる学生は、自分の作業を振り返る習慣がついています。
うまく答えられない場合も、それ自体が情報です。経験が浅いのか、振り返りの習慣がないのか、緊張しているだけなのか。言い換えて2回まで試して、それでも出てこなければ次の話題に移るくらいの構えがちょうどよいと思います。
4.答えから、何を読み取るか
ここを取り違えると、せっかく聞いても意味がありません。見たいのは技能の水準そのものではなく、学び方です。
在学中に身につく技能の量には限りがあります。入社後に伸びるかどうかを決めるのは、その中身より「どう覚えたか」のほうです。
| 読み取れること | 答えに出るかたち |
|---|---|
| 手順を分解できるか | 作業を順番に説明できる。どこで詰まったかを特定できている |
| 人に聞けるか | 先生や先輩、同級生に相談した場面が自然に出てくる |
| やり直しに耐えられるか | 一度作ったものを作り直した経験を、淡々と話せる |
| なぜそうするかを考えているか | 「そう教わったから」だけでなく、理由を自分の言葉で説明できる |
この4つは、そのまま入社後の指導のしやすさにつながります。手順を分解できる学生には手順で教えられますし、人に聞ける学生は現場で放っておいても伸びます。
逆に、技能の完成度だけで比べると、学校のカリキュラムの差を測っているだけになりかねません。同じ学科でも、実習先や担当教員によって経験の幅は変わります。
5.専攻と違う仕事を希望する学生には
専門課程で学んだからといって、全員がその分野に進むとは限りません。学ぶうちに向き不向きが見えたり、別の仕事に関心が移ったりすることがあります。
このとき、「なぜ学んだ分野に行かないのか」を問い詰める形になると、面接が止まります。聞き方を変えてください。
学んできたことのなかで、この仕事でも使えそうだと思う部分はありますか
分野が違っても、学び方は持っています。締め切りのある制作を経験していれば工程管理の感覚がありますし、実習を経ていれば現場での振る舞いを知っています。そこを見つけられるかどうかが、面接官側の仕事です。
ただし、これを主役にする必要はありません。多くの場合は、学んだ分野と仕事が重なる学生のほうが立ち上がりは早いです。専攻外の希望は、選択肢のひとつとして持っておく程度が実務的だと思います。
6.避けたい聞き方
最後に、意図せず踏みやすいところを挙げます。
| 避けたい聞き方 | 理由 |
|---|---|
| なぜ大学ではなく専門学校を選んだのですか | 進路の選択理由は、家庭の事情に触れることがあります。仕事の適性とも直接つながりません |
| ほかにどこを受けていますか | 答えによって評価が変わる質問は、学生を身構えさせます。併願状況は選考の判断材料にしないほうが健全です |
| 学校の成績は何番くらいでしたか | 学科の規模も評価基準も学校ごとに違うため、比較になりません |
| うちが第一志望ですか | この段階で確約を求めても、実質的な意味がありません。辞退への備えは別の設計で行うべきです |
このほか、本籍地や家族の職業など、本人に責任のない事項や、思想・信条など本来自由であるべき事項は、採用選考で尋ねない取り扱いが求められています。具体的にどこまでが該当するかは、厚生労働省が示している公正な採用選考の考え方をご確認ください。学校を通した採用では、この点を学校側も見ています。
辞退への備えについては、内定辞退が出たあと、企業ができることで扱っています。
7.面接の設計に落とす
聞き方が決まったら、面接そのものの組み方に反映させます。
- 入り口の質問を、学科ごとに用意しておく 実習型か、制作型か、資格型かで変えます
- 深掘りは3段までと決める それ以上は詰問になります
- 評価項目を4つ以内に絞る 第4章の観点をそのまま使えます
- 面接官の間で、見る観点を揃えておく 人によって聞くことが違うと、比較できません
- 持参物を事前に伝える 実習記録や作品があれば、話がはるかに具体的になります
5番は効果が大きいわりに、やっている企業が多くありません。「実習の記録や、制作したものがあればお持ちください」と一文添えるだけです。学生は手元の現物を指さしながら説明できるようになり、面接官は実物を見ながら聞けます。
選考の回数や日程の組み方は、専門学校生の就職活動は、いつ動くのかで扱っています。求人票の段階で何を書いておくかは、専門学校に出す求人票は、何を書けば読まれるかをご覧ください。