1.専攻と違う希望は、そう珍しくない
専門学校は、職業に直結した教育を行う学校です。だからこそ、学んだ分野にそのまま進むのが当然と受け取られがちです。
実際には、違う分野を希望する学生が一定数います。採用側から見ると、こう映ります。
製菓を2年学んできて、なぜうちの営業職に応募してくるのか。学校で学んだことが無駄になるのに、本気なのだろうか。
この違和感自体は、もっともです。ただ、違和感をそのまま見送りの理由にすると、取りこぼすことがあります。
逆に、人手が足りないからと深く確かめずに採ると、早期に辞めることになりがちです。確かめ方がある、というのがこの記事の趣旨です。
この記事は、専攻と違う希望を推奨するものではありません。多くの場合、学んだ分野に進むほうが本人にとっても企業にとっても自然です。ここでご説明するのは、違う希望が来たときの確かめ方です。学生の状況は一人ひとり異なります。
2.なぜ、違う分野を希望するのか
理由はさまざまですが、おおよそ次のどれかに当てはまることが多いように思います。そして、理由によって見方が変わります。
| 理由 | 採用側から見た位置づけ |
|---|---|
| 学ぶうちに、仕事としては別の形で関わりたいと思った (例:作る側より、売る側・伝える側に関心が移った) |
分野への関心は続いている。確かめる価値が高い |
| 実習や現場体験で、働き方が自分に合わないと分かった (体力面、勤務時間、職場の形など) |
自分で判断している。何が合わなかったかを具体的に聞く |
| 学んだ分野の求人が、希望する地域や条件で見つからない | 条件が揃えば戻る可能性がある。定着の見通しを確認する |
| 特に理由はなく、募集があったから | 慎重に。入社後に続かないことが多い |
いちばん上が、実はいちばん有望なことがあります。分野への理解を持ったまま、別の役割に回る人です。製菓を学んだ人が製菓材料の営業に進む、CGを学んだ人が制作会社の進行管理に進む、といった形です。
3.「分野は違うが、学び方は持っている」とはどういうことか
専門学校の2年間で身につくのは、その分野の知識と技術だけではありません。
- 締切に合わせて仕上げる経験 課題や作品の提出を、繰り返してきています
- 人に見せて、直す経験 講評や指導を受けて手を入れる往復を経験しています
- 手順を覚えて、繰り返す経験 実習の多い学科ではとくに積み重ねがあります
- 道具やソフトを覚える経験 新しいものを覚えることへの抵抗が小さい傾向があります
これらは分野が変わっても持ち越せます。そして、仕事を始めたばかりの時期に効いてきます。
ただし、学科によって経験の質は大きく異なります。「専門学校だから必ずこうだ」とは言えません。だからこそ、本人に確かめる必要があります。
4.書類で見るところ
応募書類の段階では、見るところを2つに絞ります。
- 志望理由に、学んだことへの言及があるか
- 在学中に取り組んだことが、具体的に書かれているか
1番目について。学んだ分野にまったく触れず、御社の理念に共感した、としか書かれていない場合は、注意して見ます。2年間を自分で説明できていないということだからです。
| 確かめにくい書き方 | 話を聞きたくなる書き方 |
|---|---|
| 人と接する仕事がしたいと思い、志望しました | 調理の実習で、作ったものを人に出す場面がいちばん面白いと感じました。作る側より、届ける側に関わりたいと思うようになりました |
| 学んだことを活かして貢献したいです | CGの制作で、締切に間に合わせるための段取りを組むことが多くありました。その部分を仕事にしたいと考えています |
右側は、学んだことと希望が、本人のなかでつながっています。この接続が自分の言葉で書けている人は、入社後の説明もできます。
2番目については、分野が違っても見るところは同じです。専門学校生の面接で、何を聞けば学びが見えるかでご説明しています。
5.面接で確かめること
聞きたいことは、結局ひとつです。「この希望は、いつ、どうやって固まったのか」。これを3つの質問に分けます。
| 質問 | 見えること | |
|---|---|---|
| ① | 学校に入ったときは、どういう仕事を考えていましたか | 出発点。もともとの志望 |
| ② | いつごろ、今の希望に変わりましたか。きっかけはありましたか | 変わった時期と理由。実習や現場体験が挙がることが多い |
| ③ | 学校で学んだことで、この仕事でも使えそうだと思うことはありますか | 本人のなかで接続できているか |
③が核心です。答えが出てこない場合は、慎重に判断してください。2年間と希望が、本人のなかでつながっていないということです。入社後、うまくいかないときに戻る場所がありません。
逆に、小さくても具体的な答えが返ってくれば、見込みがあります。
実習では、段取りを先に考えないと時間内に終わりませんでした。手を動かす前に順番を決める癖がついたので、それはどの仕事でも使えると思っています。
あわせて、学んだ分野に未練がないかも、率直に聞いてください。隠されるより、話してもらったほうが安全です。「いずれ戻りたい気持ちはあります」と言われたら、それを前提に受け入れるかどうかを判断すればよいだけです。
6.受け入れ先を、どう考えるか
採ると決めた場合、配属を考えるときに意識していただきたいことがあります。
学んだことが少しでも触れる場所に置けないか、を一度検討してください。まったく接点のない配置より、定着しやすくなることがあります。
| 学んだ分野 | 接点のつくり方の例 |
|---|---|
| 調理・製菓 | 食品を扱う商材の営業、商品開発の補助、店舗運営 |
| デザイン・CG | 社内の資料や販促物の制作、制作会社とのやり取り |
| 建築・インテリア | 図面を読む必要がある業務、現場とのやり取り |
| 介護・医療 | 福祉用具や医療機器を扱う営業、施設向けの提案 |
完全に一致させる必要はありません。「学んだことが、まったく無駄にはならない」と本人が感じられるだけで違います。
なお、介護・医療分野を学んだ学生については、取得見込みの資格の扱いが判断に関わることがあります。介護・医療の新卒採用で、資格の取得見込みをどう扱うかをご覧ください。
なお、未経験者として迎える場合に何を伝えるべきかは、ITの新卒採用で「未経験可」だけでは伝わらないことの考え方が参考になります。分野は違いますが、できないことを前提に、何を教えるかを示すという点は共通です。
受け入れ体制そのものは、新卒を初めて採る会社が、先に決めておくことをご覧ください。
7.見送る判断も、きちんとする
最後に、採らない場合の話です。
専攻と違う希望の学生を見送ること自体は、まったく問題ありません。合わないものは合いません。無理に採って半年で辞めるほうが、本人にとっても損失です。
ただ、見送る理由は本人に伝えてください。とくに次のように伝えられると、学生にとって意味があります。
今回は見送らせていただきます。お話を伺って、学校で身につけられたことが活きる場が、弊社の今の募集にはないと判断しました。
実習の話をされていたときの様子を見て、そちらの分野で探されるほうがよいのではないかと思いました。
学生は、専攻と違う応募をするとき、自分でも迷っています。きちんと見てもらったうえでの言葉は、進路を考え直す材料になります。
そして、学校経由の応募であれば、理由を学校にも伝えてください。先生は学生の状況を知っています。次に紹介される学生の精度が上がります。
まとめると、専攻と違う希望はすぐ見送るのも、無条件に歓迎するのも違います。確かめるのは「いつ、なぜ、どう変わったか」と「学んだことと希望が本人のなかでつながっているか」。採るなら学んだことが少しでも触れる場所に置くこと。見送るなら理由を伝えること。面接での聞き方は専門学校生の面接で、何を聞けば学びが見えるか、対象学科の示し方は専門学校に出す求人票は、何を書けば読まれるかをあわせてご覧ください。