1.合否が出るのは、卒業の直前です

介護・医療系の学科では、在学中に国家試験を受け、卒業までに資格を取得することを前提にカリキュラムが組まれています。

ところが採用する側から見ると、順番が逆になります。内定を出すのは試験の前です。選考の時点で学生が持っているのは「取得見込み」という状態でしかありません。そして結果が判明するのは、多くの場合、卒業の直前です。

つまり企業は、資格を持っていない人に内定を出し、入社の直前に持っているかどうかが確定するという進め方をしています。ここを意識せずに選考を進めると、万一のときに打つ手がありません。

この記事は、社内で先に決めておく項目の整理です。試験の日程も合格発表の時期も、資格・学校によって異なります。また、内定の取り扱いには法律上の制約があり、個別の判断は事情によって変わります。実際の運用は、弁護士・社会保険労務士など専門家にご確認ください。

2.その資格は「ないと働けない」ものか

最初に確認するのは、ここです。資格がないと、その業務自体ができないのか。それとも、資格がなくても別の形で働けるのか。この違いで、取れる選択肢がまったく変わります。

種類意味不合格だった場合
業務独占 その資格を持つ人でなければ、その業務を行えない 予定していた業務には就けません。別の仕事を用意できるかが分かれ目になります
名称独占 資格がなければその名称を名乗れないが、関連する業務には就ける場合がある 職種や業務範囲を調整したうえで、働いてもらえる余地があります

介護・医療の分野には、両方のタイプの資格があります。自社が募集している職種がどちらに当たるのか、業務範囲がどこまで変わるのかは、必ず所管の制度で確認してください。同じ「介護」「医療」でも、資格によって扱いが異なります。

ここが確認できていないと、次の第3章で選択肢を並べることができません。

3.不合格だったときの選択肢を、先に並べる

起こってから考えると、時間がありません。卒業と入社の間は短く、学生も学校も動揺しています。選考を始める前に、自社が取れる選択肢を並べておいてください。

選択肢成り立つ条件検討しておくこと
予定どおり入社し、資格が必要ない業務を担当する 名称独占の資格、または無資格でも就ける職種がある 担当する業務、給与、次の受験までの期間の扱い
入社時期を遅らせる 次の受験機会まで待てる体制がある その間の生活をどうするか。学生にとって負担が大きい選択です
別の職種で採用する 社内に受け皿がある 本人の希望と合うか。合わなければ早期離職につながります
採用を見送る —— 法律上の制約が強い選択です。必ず事前に専門家へご確認ください

最後の選択肢について補足します。内定は、一般に労働契約が成立したものとして扱われます。そのため、内定の取り消しは解雇に準じて厳しく判断される、という考え方が知られています。「資格取得を条件にしていた」と口頭で伝えていただけでは足りない可能性が高く、具体的にどこまで認められるかは、個別の事情によります。

ここを安易に想定して選考を進めると、あとで立ち行かなくなります。上の3つのうちどれが取れるかを先に確かめ、どれも取れない場合にどうするかを専門家と相談しておく——この順番をおすすめします。

4.内定通知に、何をどう書くか

第3章で自社の方針が決まったら、それを書面に落とします。口頭だけで済ませないでください。学生にとっても、あとから「そんな話は聞いていない」となるのがいちばん不幸です。

書いておく項目は、おおむね次のとおりです。

  1. 入社時に取得している前提の資格名 正式名称で
  2. 取得できなかった場合の取り扱い 第3章で決めた選択肢を、そのまま書きます
  3. その場合の職種・業務内容・勤務条件 変わるのであれば、変わる内容を具体的に
  4. 次の受験に向けた支援の有無 第5章の内容です
  5. いつまでに結果を連絡してもらうか 本人からの連絡方法と期限

文面そのものは、専門家に確認してから確定してください。書き方によって法的な意味が変わり、企業側が意図したとおりに機能しないことがあります。この記事でご説明しているのは「何を決めておくか」であって、「どう書けば取り消せるか」ではありません。

5.次の受験までを、どう支えるか

不合格だった学生を受け入れる方針を取る場合、次の受験までの過ごし方が問題になります。ここを設計しておくと、採用時の説得力がまったく違います。

支援の内容決めておくこと
学習時間の確保 試験前にシフトを調整するか。休暇を認めるか
費用の負担 受験料、講習費、教材費をどこまで会社が持つか
勤務の組み方 夜勤や変則勤務を、試験前だけ外せるか
社内の受け止め 周囲にどう説明するか。本人が居づらくならない配慮

最後の項目は見落とされがちですが、実務では大きく効きます。同期が資格を持って働いているなかで、1人だけ違う立場になるわけです。受け入れる側の空気づくりまで含めて決めておくと、定着します。

入社後の受け入れ全般については、映像・放送の新卒採用で、入社前に何を伝えておくかの考え方も参考になります。

6.給与と資格手当の扱い

資格の有無で給与が変わる場合、その扱いも先に決めておきます。

  • 資格手当は、いつから支給するか 合格発表の月か、登録が完了した月か、翌月か
  • 取得前の基本給をどうするか 有資格者と同額にするか、差をつけるか
  • 差をつける場合、その幅と理由を説明できるか 担当業務が違うのであれば、そこと結びつけます

資格を持たない状態で入社する可能性がある以上、求人票の段階で「資格取得後」と「取得前」の両方を示せるほうが誠実です。学校の就職担当者も、そこを見ています。

初任給そのものの決め方は専門学校卒の初任給をどう決めるか、求人票への書き方は専門学校に出す求人票は、何を書けば読まれるかで扱っています。

7.学校と学生に、どう伝えるか

方針が決まったら、伝え方です。ここで気をつけたいのは、不安をあおる形にしないことです。

学生は試験に向けて勉強しています。そこに「落ちたらこうなります」という話を前面に出されると、その企業を避ける理由になりかねません。順番を変えてください。

避けたい伝え方伝わりやすい言い換え
資格が取れなかった場合は、内定を取り消すことがあります 万一のときも、こういう形で受け入れる用意があります。そのうえで、合格に向けて支援します
資格取得は入社の必須条件です 入社時に取得している前提で、〇〇の業務をお願いします。取得前の場合は△△を担当していただきます

学校の就職担当者に対しても同じです。「万一のときにどうするかを決めている企業」は、学校から見て安心して学生を送り出せる先になります。決めていない企業のほうが、実は警戒されます。

整理すると、社内で先に決めるのは4つです。資格の種類(業務独占か名称独占か)、不合格時に取れる選択肢、内定通知での書き方、次の受験までの支援。このうち書面に関わる部分は、必ず専門家にご確認ください。