1.中途採用のやり方は、なぜ新卒に通用しないのか
中途採用では、入ってくる人がすでに仕事のやり方を知っています。前の会社とのやり方の違いを埋めれば、数か月で戦力になります。だから、受け入れ側は特別な準備をしなくても回ってきたはずです。
新卒は、ここが根本的に違います。
| 中途採用 | 新卒採用 | |
|---|---|---|
| 入社時点で持っているもの | 仕事の進め方、業界の常識、社会人としての型 | 学校で学んだ専門分野の知識と、実習の経験 |
| 最初に教えること | 自社のやり方との違い | 仕事の進め方そのもの。報告の仕方、段取りの付け方 |
| 戦力になるまで | 数か月 | 年単位で考える |
| 辞める理由 | 条件、仕事内容の不一致 | 孤立。何をすればよいか分からない状態が続くこと |
いちばん下の行が重要です。新卒が早期に辞めるとき、仕事が難しすぎたという理由は、実はあまり多くありません。聞ける相手がいない、今日やることが分からない、自分がここにいる意味が分からない。こうした状態が続くと、辞めます。
この記事でご説明するのは、募集を出す前に社内で決めておく項目です。会社の規模や業種によって事情は異なります。自社の形に置き換えてお読みください。
2.募集を出す前に決める、6つのこと
完璧な制度を作る必要はありません。1人目を迎えるのに必要な最小限を決めます。
| 決めること | 決めていないと起きること |
|---|---|
| 指導役を誰にするか | 全員が「誰かが見ているだろう」と思い、誰も見ていない状態になる |
| 1年目に任せる仕事の範囲 | 手が空いたときの雑務しか回らず、本人が成長を感じられない |
| 初任給と、その根拠 | 面接で金額を聞かれて答えられない。あとから社内で揉める |
| 評価と昇給の時期 | 「がんばれば上がる」としか言えず、学生が将来を描けない |
| 入社までの連絡の担当 | 内定から入社までの数か月、会社から何の連絡もない状態になる |
| 初日に誰が何をするか | 初日に放置され、第一印象で「この会社は大丈夫か」と思われる |
この6つは、どれも社内だけで決められることです。採用活動を始めてからでは間に合いません。面接の場で学生から聞かれるからです。
3.指導役を誰にするか
最初に決めるべきは、ここです。名前を1人、決めてください。「部署全体で見る」は、決めていないのと同じです。
選ぶときの目安は3つです。
- 年齢が近すぎず、遠すぎない 入社3〜7年目くらいの社員が務めやすい位置です
- その人の仕事を少し減らせる 教える時間を業務として確保できないと、続きません
- 本人が引き受けている 押しつけられた人が教えると、新卒にも伝わります
そのうえで、指導役を1人にしないことも大切です。相性が合わないことはあります。日々の指導役とは別に、月に一度話を聞く人(直属でない先輩や、経営者自身)を決めておくと、逃げ道になります。
日々の仕事は、入社5年目の◯◯が見ます。月に1回、30分だけ私(社長)と話す時間を取ります。仕事の話でなくてもかまいません。
これを面接で言えると、学生の受け取り方が変わります。この会社は、新卒を迎える準備をしていると伝わるからです。
4.1年目に任せる仕事の範囲を決める
「まずは見て覚えてもらう」という受け入れ方は、新卒には向きません。見ているだけの時間が長いと、本人は自分が役に立っていないと感じ始めます。
決めるのは、次の3段階です。
| 時期 | 任せること | 目的 |
|---|---|---|
| 最初の1〜3か月 | 手順が決まっていて、間違えても直せる仕事 | 職場に慣れる。聞くことに慣れる |
| 半年ごろ | 一部を任せる。先輩が確認する前提で | 自分の担当を持つ感覚をつかむ |
| 1年目の終わり | 小さくても、最後まで任せる仕事を1つ | できるようになったと実感する |
専門学校生の場合、在学中に実習で手を動かしてきた分野があります。その領域から任せると、立ち上がりが早くなります。学科で何を扱ってきたかは、学校によって異なります。採用の段階で確認しておいてください。
採用枠が1名の場合は、選考の進め方そのものも変わります。採用人数が1名のとき、何を変えるかでご説明しています。
面接で学びの中身をどう聞くかは、専門学校生の面接で、何を聞けば学びが見えるかでご説明しています。
5.給与と、評価の時期を決める
初任給は、面接で必ず聞かれます。求人票にも書きます。決め方の根拠まで用意しておいてください。
専門学校卒の初任給をどう置くかは、専門学校卒の初任給をどう決めるかで詳しく扱っています。ここでは、あわせて決めておく2点を挙げます。
- 最初の評価はいつか 入社何か月目に、誰が、何を見るのか
- 昇給の時期と幅の考え方 金額を約束できなくても、時期と判断材料は言えます
学生が知りたいのは、3年後の自分が想像できるかです。
| 伝わりにくい | 像が結べる |
|---|---|
| 実力に応じて昇給します | 入社6か月目に面談で振り返りを行い、1年目の終わりに最初の見直しをします |
| がんばりを評価します | 1年目は、任せた仕事を自分で最後まで進められるようになったかを見ます |
| 将来は幹部も目指せます | 今いる社員では、入社5年目で小規模な案件の担当を持っています |
右側は、立派なことを言っていません。すでに社内で起きていることを、そのまま言葉にしただけです。
6.入社初日までに用意するもの
見落とされやすいのが、ここです。中途採用なら本人が自分で動けますが、新卒は動けません。
- 席 どこに座るのか。物理的な居場所がないと、本当に居場所がないと感じます
- 道具 パソコン、作業着、工具、名刺。初日に揃っているか
- 初日の予定 誰が迎えて、何を説明し、昼食はどうするか。時間単位で決めておきます
- 最初の1週間の予定 空白の時間を作らない。見学でも構いません
- 社内への周知 いつ、誰が入るのかを全員が知っている状態にします
あわせて、内定から入社までの連絡も決めておいてください。専門学校生の場合、内定から入社まで数か月あくことがあります。その間まったく連絡がないと、不安になります。
月に1回、短い連絡を入れるだけでも違います。社内報、現場の写真、入社日の案内。内容より、忘れられていないと分かることが大事です。
内定を出したあとの対応は、内定辞退が出たあと、企業ができることでも扱っています。
7.決まっていないことは、決まっていないと言う
ここまで6つを挙げましたが、すべてを完璧に決めてから採用を始める必要はありません。決まっていないことは、面接でそう言ってください。
評価の仕組みは、正直なところ、これから作るところです。あなたが1人目になるので、一緒に形にしていくことになります。
決まっていないことは、決まっていないとお伝えします。
このほうが、曖昧にごまかすより信用されます。中小企業で新卒を採るとき、整っていることより、正直であることのほうが効きます。
そして、学生が初めての新卒であることを、むしろ伝えてください。1人目であることは、学生にとって不安材料でもあり、同時に自分が必要とされているという実感にもなります。
採用を始める順序としては、次のように進めるとつまずきにくくなります。
- この記事の6項目を社内で決める
- 求人票に落とす(専門学校に出す求人票は、何を書けば読まれるか)
- 学校とつながる(専門学校の学内説明会に参加するには。学校への連絡と準備)
- 学生が動く時期に合わせる(専門学校生の就職活動は、いつ動くのか)
まとめると、決めるのは指導役・1年目の範囲・初任給・評価の時期・入社までの連絡・初日の段取りの6つ。完璧である必要はなく、決まっていないことは正直に伝えること。応募要件に「大卒以上」が残っている場合は、「大卒以上」を外すとき、社内をどう通すかもあわせてご覧ください。