1.作品を見ても、誰が何をしたかは分からない

ゲーム系の学科では、チームでひとつの作品を作り上げる形の制作が多くあります。プランナー、プログラマー、グラフィック、サウンド。役割を分けて、数か月かけて1本にまとめる。実務に近い進め方です。

ところが選考の場では、これが見えにくさになります。ポートフォリオに並ぶ作品が、本人の手によるものとは限りません。そして学生の側も、意図的に隠しているわけではないことがほとんどです。

  • チーム制作なので、自分の担当箇所だけを切り出して見せにくい
  • 授業課題は、テーマも素材も指定されている。同級生と似た作品になる
  • 「参加した作品」として載せるのが、学校では普通の書き方になっている

つまり、作品の出来だけを見て判断すると、測れていないものを測ったことにしてしまいます。

作品の見方そのものは、デザイン職の新卒採用で、ポートフォリオのどこを見るかでご説明しています。この記事は、その手前の「どこからどこまでが本人の仕事か」を確かめる話です。学科の構成や制作の形は学校ごとに異なるため、聞き方は相手に合わせて調整してください。

2.疑うのではなく、分けて聞く

ここでいちばん大事なのは、態度です。「これ、本当にあなたが作ったんですか」という聞き方をしてはいけません。

学生は嘘をついているわけではありません。チーム制作を、企業向けに説明し直す訓練を受けていないだけです。疑われたと感じた時点で、話が縮こまり、確かめたいことが出てこなくなります。

前提をこちらから言葉にしてください。

チームで作ったものだと思うので、あなたが担当した部分を中心に教えてください。担当していないところは「これは別の人」で大丈夫です。

この一言があるだけで、学生は安心して分担を話せます。正直に「ここは自分ではありません」と言える学生のほうが、入社後も報告してくれます。そこも含めて見ている、という構えでいてください。

3.担当した範囲を確かめる、3つの質問

分担を聞いたあと、深さを確かめます。使えるのは次の3つです。

質問何が分かるか
この部分で、いちばん時間がかかったのはどこですか 実際に手を動かしていれば、必ず詰まった箇所があります。答えが出てこない場合は、関与が浅い可能性があります
チームの他の人から、何を渡されて、何を渡しましたか 工程の前後が分かります。データの受け渡しの形まで答えられれば、実際に関わっています
この仕様は誰が決めましたか。決めたときの理由を聞いていますか 指示どおり作っただけか、意図まで理解していたかが分かれます

3つ目は、答えが「聞いていません」でも構いません。実務でも、理由を知らないまま作業することはあります。見たいのは、そこに関心を持ったかどうかです。

4.完成品より、途中のデータを見せてもらう

言葉で確かめるより早い方法があります。制作の途中のデータを見せてもらうことです。

完成品は外から持ってくることもできますが、途中のデータは、実際に作っていなければ手元にありません。

見せてもらうものそこから分かること
作業中のファイル(レイヤー、ノード、階層の構成) 整理されているか。あとから人が触れる作りになっているか
モデルのワイヤーフレーム、リグ、UV 見た目の裏側まで作り込んでいるか。数を意識しているか
ラフ、絵コンテ、設定画 どこから考え始めたか。人の案に乗っただけかどうか
バージョン管理の履歴、作業ログ いつ、どのくらいの頻度で手を入れていたか

「持っていない」という答えもあり得ます。学校のPCに置いたまま、消してしまった、といった事情です。それ自体を減点にする必要はありません。ただ、次の面接までに用意できるかを聞いておくと、仕事の段取りの取り方が見えます。

面接で持参物を事前に伝えておくと、この話がスムーズになります。専門学校生の面接で、何を聞けば学びが見えるかもあわせてご覧ください。

5.素材の出所を確認する

配布されているモデルやテクスチャ、効果音、ライブラリを使うことは、実務でも当たり前に行われています。使っていること自体は問題ではありません。

確かめたいのは、次の2点です。

  1. どこまでが自作で、どこからが既存素材か 区別を説明できるか
  2. 使用条件を把握しているか 商用可かどうか、表記の義務があるかを意識しているか

2つ目は、実務に直結します。使用条件を確認する習慣がない人が入社すると、あとで困るのは会社です。知識の量ではなく、確認する習慣があるかを見てください。

生成ツールを使った素材が含まれる場合もあります。ここは自社の方針を先に決めておいてください。認めるのか、認めないのか、用途によるのか。権利関係の扱いは分野や契約によって異なり、変化も速い領域です。判断に迷う場合は、社内の法務や取引先との契約条件をご確認ください。方針が決まっていないまま学生に問うと、答えようがありません。

6.完成度ではなく、直した回数を見る

在学中に作れるものの完成度には、限界があります。時間も、使える機材も、指導の量も限られています。完成度で比べると、学校のカリキュラムの差を測っているだけになりかねません。

代わりに見るとよいのは、作り直した経験です。

聞くこと読み取れること
作り直した箇所はありますか。なぜ直しましたか 自分で問題を見つけられるか。人の指摘を受け入れられるか
直したあと、よくなったと思いますか 判断の基準を持っているか。「言われたから直した」で止まっていないか
時間がもっとあれば、どこを直しますか 自分の作品の弱点を把握しているか

この分野の仕事は、修正の繰り返しで進みます。直すことに抵抗がない人は、入社後の伸びが違います。逆に、一度作ったものを直したがらない人は、現場で苦労します。

7.実技課題を出すかどうか

最も確実なのは、その場で作ってもらうことです。ただし、負担との兼ね合いがあります。

形式向いている場面気をつけること
持ち帰りの課題 じっくり見たいとき 授業や制作と重なると、大きな負担になります。所要時間の目安を必ず伝えてください
その場での簡単な作業 基本操作を確かめたいとき 使い慣れた環境と違うと実力が出ません。ツールと環境を事前に伝えます
既存作品の改善案を聞く 考え方を見たいとき 手を動かさずに済むので負担が軽い。実務の判断に近いことを聞けます

3つ目は、あまり使われていませんが有効です。本人の作品を前にして「ここをもっとよくするとしたら、何をしますか」と聞くだけです。準備も採点基準もいりません。

整理すると、確かめる順番は「分担を分けて聞く → 途中のデータを見る → 素材の出所を聞く → 直した経験を聞く」です。実技課題は、ここまでで判断がつかないときに検討してください。求人票の段階で何を伝えておくかは、専門学校に出す求人票は、何を書けば読まれるかで扱っています。